
今回は、「定期預金の金利がどうやって決まるのか?」について解説します。
目次
定期預金の金利(利息)はどうやって決まるのか?

定期預金の金利(利息)を決定するのは、各銀行です。
銀行が自由に金利(利息)を設定することができます。
以前は、銀行の当座預金、普通預金、通知預金、規制金利定期預金などの預貯金は、日本銀行政策委員会より金利の最高限度の決定・変更・廃止が決められていたのです。自由に銀行が金利を決めることができなかったのです。しかし、1979年の金利自由化を皮切りに1994年10月までの金利自由化で、ほぼすべての金利は、銀行が自由に決められる形になったのです。
「定期預金の金利(利息)はどうやって決まるのか?」を知るためには、まず「銀行のビジネスモデル」について理解する必要があります。
銀行のビジネスモデル

- 低金利で資金を調達する
- 高金利で資金を融資(貸付)する
- 利ザヤが銀行の収益
というのが基本的な銀行のビジネスモデルです。
銀行が資金を調達する先は
- 預金
- 他の銀行からの調達
の大きく分けて2カ所があります。
銀行が資金を融資する先は
- 企業融資
- 住宅ローン
- カードローン
- マイカーローン
- 教育ローン
など多岐にわたります。
銀行としては、収益を大きくするためには「利ザヤ(調達金利と融資金利の差)」を大きくしなければならないため、

と考えるのですが

という問題を抱えるため、
- どのくらい預金を増やす必要があるのか?(≒銀行側の資金需要、銀行の経営計画)
- 競合他社と比較して預金金利の位置づけはどこになるのか?(≒預金者数、預金額の目標値)
- 融資金利はどのくらいになっているのか?(≒利ザヤ)
の兼ね合いで、預金の金利(利息)が決まってくるのです。
定期預金の金利(利息)は「短期金利(政策金利)」と「長期金利(国債金利)」に連動する!

定期預金の金利(利息)は、銀行が上記のようなベースの考え方を基に決定するのですが、概ね「短期金利(政策金利)」と「長期金利(国債金利)」に連動する仕組みとなっています。
「短期金利(政策金利)」とは
「無担保コールレート(無担保コール翌日物)」とは
銀行は、住宅ローンや企業融資などでお金を貸し付けるとともに、個人からの預金などで資金を調達しています。思った以上に住宅ローンの申込が増えたり、企業への高額融資が重なったりすれば、すぐに資金不足になってしまいます。高額預金者が大金を引きだすだけでも、銀行の資金バランスは崩れてしまうのです。
これに対応できるように、資金が余っている銀行と資金が不足している銀行が無担保でお金を貸し借りする市場が作られました。これが無担保コール市場なのです。
この無担保コール市場で、
と呼ぶのです。
無担保コールレート(無担保コール翌日物)は、日銀のウェブサイトで確認できます。
無担保コールレート(無担保コール翌日物)


2019年1月10日
- 平均:-0.058%
- 最高:0.001%
- 最低:-0.086%
となっています。

2016年1月末に日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策(「マイナス金利政策」)」を導入しました。
ということです。
民間銀行が日銀に預金をすると
のですから、それよりも安く、例えば金利-0.05%で資金を預かってくれるのであれば、日銀ではなくて他の銀行へ預けたいというニーズが発生するので、無担保コールレート(無担保コール翌日物)もマイナス金利になるのです。
無担保コールレート(無担保コール翌日物)の推移

2016年からガクっと下がっていることがわかります。

日銀です。
日銀は「政策金利」として、「無担保コールレート(無担保コール翌日物)」を誘導目標に設定しています。
景気が不景気の時
日銀が無担保コール市場にお金を入れて、お金の量を増やします。お金が増えれば無担保コール翌日物の金利は下がります。
「無担保コールレート」の金利が下がれば、銀行が企業へ融資する金利も低下するので、設備投資が活発になり、好景気に向かいます。
景気が好景気の時
日銀が無担保コール市場からお金を引き上げて、お金の量を減らします。お金が増えれば無担保コール翌日物の金利は上がります。
「無担保コールレート」の金利が上がれば、銀行が企業へ融資する金利も上昇するので、投資が抑制され、バブルが崩壊するのを抑制するのです。
日銀によって「無担保コールレート(無担保コール翌日物)」はコントロールされるため、無担保コール翌日物の金利を政策金利と呼ぶのです。日銀の金融政策次第で「無担保コールレート(無担保コール翌日物)」の金利は変動するのです。
「短期金利(無担保コールレート)」と「定期預金金利」の関係
- 無担保コール市場からの調達
- 預金からの調達
も、銀行が資金を調達する方法として、同じものです。
「短期金利(無担保コールレート)」と「定期預金金利」は連動します。
もし、仮に
- 「短期金利(無担保コールレート)」:0.1%
- 「預金金利」:1.0%
というような状況だとすれば、銀行は「無担保コール市場から資金を調達する」方が「預金で資金を調達する」よりも、何倍もコストが安いことになります。
「預金金利」は、銀行が決められるので、このような設定にするのは意味がないのです。
「預金」の場合は、預金者がATM手数料・振込手数料を支払ってくれたり、他のローン商品を使ってくれる可能性もあるため、若干有利にはなるのですが・・・
- 「預金金利」は、「短期金利(無担保コールレート)」に連動する
- 「預金金利」は、「短期金利(無担保コールレート)」を若干高くしたものになる
のが一般的です。
これに
- 自分の銀行の資金需要の状況
- 他の競合銀行の状況
などが加味されて「預金金利」が決定されることになります。
「長期金利(国債金利)」とは
国の借金である「国債」は、債券市場で売買することができます
- 国債を買う人が多い → 金利が低くても売買が成立する → 金利は低下する
- 国債を買う人が少ない → 金利が高くないと売買が成立しない → 金利は上昇する
仕組みとなっています。
国債金利は、各証券会社のウェブサイトで確認できます。
長期金利推移グラフ

「国債」は、日本国が発行する債権ですから、日本国が破綻しない限りは、お金が戻ってくる「銀行よりも安全な投資先」です。
銀行には、1,000万円までの預金が補償されるペイオフという制度がありますが、これを補償しているのも、政府ですので、政府が破綻すれば、この約束も、守られない可能性が高いのです。
もし、仮に
- 国債金利:年率1.0%
- 定期預金金利:年率0.1%
だとしたら、多くの人は「国債」を買うはずです。
「定期預金金利」も、「長期金利(国債金利)」に近い金利を設定せざるを得ないのです。
まとめ
- 銀行の金利は、銀行が自由に決めることができる
銀行は
- 少しでも安く資金を調達したい。(≒預金金利を下げたい。)
- ただし、競合銀行と比較して低金利に設定しすぎると預金者がいなくなる。
という2つの相反する状況の中で「預金金利」を決定しています。
1年未満の定期預金金利は
- 短期金利(無担保コールレート)
1年以上の定期預金金利は
- 長期金利(国債金利)
をベースに
- 自行の資金需要の状況
- 他行の預金金利設定の状況
- 自行の経営計画との現状の乖離
などを総合的に勘案して「定期預金金利」は決められるのです。
結局、どの銀行も、同じ「短期金利(無担保コールレート)」「長期金利(国債金利)」を見ているので、後は

「うちの銀行はできたばかりで預金者が少ないから、高金利にして知名度を上げたい」
「ライバル銀行が定期預金金利を上げて、顧客が奪われているから、うちも金利を上げなければならない。」
「決算前なのに経営計画の目標値に全く達していないから、無理をしてでも顧客を増やす必要がある。」
というような様々な要因から、「定期預金金利」は決定されているのです。
定期預金が高金利の銀行、定期預金が低金利の銀行は、毎月変わっていくのはこのためなのです。状況が刻一刻と変わり、他の銀行の動向を受けて、金利を動かす銀行も少なくありませんので、毎月のように高金利の定期預金は変わってしまうのです。
定期預金金利は予想できるの?

できます。
銀行の預金金利の判断基準となる
- 短期金利(無担保コールレート)
- 長期金利(国債金利)
は、日銀の政策金利(誘導目標)次第で変動します。
短期金利(無担保コールレート)は直接的に日銀がコントロールしているのですが、長期金利(国債金利)は、短期金利(無担保コールレート)の影響を受けるので、結局は、両方とも日銀が決めているようなものです。
日銀の金融政策というのは、日本政府が決める形になります。
日本政府が55%を出資して、日銀(日本銀行)は、設立されており、日銀総裁も、総理大臣が任命する権利があるのです。正確に言えば、総裁を選出する際は、政府が人事案を国会に提出して、その後、衆議院・参議院の両院の同意を得て任命されます。
日本政府の意向に沿って、日銀は金融政策を実行する
と考えて良いでしょう。
日本とアメリカの政策金利推移

日本の政策金利は、2008年12月、リーマンショックの後から、ずっと0.1%に設定されています。
不景気になれば、政府は金利を引き下げて、企業が融資を受けやすい環境を作り、設備投資にお金を回すことで景気回復を狙うからです。
アメリカも同じタイミングで政策金利を引き下げる金融政策をとりましたが、景気が回復し、政策金利は2.5%まで上昇しているのです。
アメリカの定期預金金利は、十分に高金利なところまで回復しています。
日本の外貨預金の預金金利を見れば、米国の金利水準が高くなっていることがわかります。
GMOあおぞらネット銀行の外貨普通預金金利
2019年1月時点


日本の場合は、アメリカとは違って、少子高齢化、人口減という問題があり、日銀がいくら市場にお金を供給しても、財布のひもは固く、消費は伸びない現象に陥っています。
そのため、本来は、政策金利のゼロ金利政策をとれば、景気は上向くはずなのですが、なかなか上向く気配がないのが実情です。

政策金利がなかなか上がらないということは、日本の定期預金金利も、なかなか上がらないということを意味しています。
現時点では、定期預金金利が上昇する可能性は低と考えざるを得ないのです。
まとめ
- 定期預金金利がどうやって決まるのか?
を理解していれば
- どのタイミングで金利が上がるのか?
- どのタイミングで金利が下がるのか?
も、ある程度は理解できるようになってきます。

定期預金金利は
- 政策金利
- 国債金利
と連動するので「政策金利」や「国債金利」のニュースがあれば、気を付けてみておくと定期預金金利に反映されるのがわかるはずです。
ただし、「政策金利」がどう動くのか?を正確に予想することは困難ですので、「今後金利が上がりそうだから定期預金に預け入れるのは待っておこう。」と預金を控える必要はなく、定期預金に預け入れして、万が一金利が急上昇したら、中途解約して預入直せば良いだけです。
「定期預金の金利って、予想できないの?」
・・・